ヤエムグラ


 散歩道にしている林の縁で、ヤエムグラが群がって水中の藻のように風に靡いています。

 茎は60~100cmくらいまで伸びますが、細く柔らかで弱いため、自立することができず、他の草木などに寄り掛かるか、大抵の場合は仲間と群れて、肩を組み合って立っています。そのため、四角の茎のそれぞれの稜上には下向きの刺があり、相手に引っ掛けやすくなっています。

 4裂した花冠の径は1~2㎜と極小さい。白に近い黄緑色の花が葉腋や茎の先端に咲いていますが、白い色をしていなければ見落としてしまいそうです。それでも4本の雄しべと、柱頭が二つに分かれた雌しべがしっかり付いていますから素晴らしい。

 細長い葉が6~8葉輪生していますが内2葉が本葉で、他は托葉です。ここにも刺があり、昔の子供はこの葉を切り取って、勲章に見立てて胸につけて遊んでいたそうです。勲章花の別名があります。

 花後3~4㎜程の実が2つずつ生りますが、こちらにも鉤型の刺があり、人の衣服や動物の毛に着いて移動しています。

 万葉集に「やえむぐら」として2首。「むぐら」として2首詠われていますが、そのうちの1首。

  思ふ人 来むと知りせば 八重むぐら 覆へる庭に 玉敷かましを
                  巻11-2824 作者未詳

 ところが、万葉集でいう「八重むぐら」は今のヤエムグラではありません。むぐらとは、今のヤエムグラも含めたつる性の雑草の総称のことで、それが幾重にも生い茂った様をやえむぐらと言っています。つまり、人も通わなくなって雑草が生い茂って荒れ果てた地を表現する言葉として使われていました。今のヤエムグラに、ヤエムグラとして固有の名が与えられたのは江戸時代になってからのようです。
 (歌意は、私が思う恋しいあなたが 来られると知っていたら 雑草に 覆われた庭に 玉を敷いて綺麗にしておきましたのに = 当時は妻問い婚で、夫が夜妻のもとに通っていました。しばらく通っていなかったのでしょうか。)

  分類 アカネ科 ヤエムグラ属 1~越年草
  分布 在来種 日本全土  林縁・藪・道端など
  花期 4~6月
  高さ 60~100cm
  花径 1~2㎜
  別名 勲章花  花言葉 抵抗





ホーム トップ