松 の 歌

巻 1



   
 我が背子は 仮廬作らす 草なくは 小松が下の 草を刈らさね1-11 中皇命
 白波の 浜松が枝の 手向くさ 幾代までにか 年の経ぬらむ
  (一に云ふ、年は経にけむ)
1-34 川島皇子
 いざ子ども 早く日本へ 大伴の 三津の浜松 待ち恋ひぬらむ1-63 山上憶良
 霰打つ 安良礼松原 住吉の 弟日娘と 見れど飽かぬかも 1-65 長皇子 
 大伴の 高師の浜の 松が根を 枕き寝れど 家し偲はゆ1-66 置始東人
 我妹子を 早み浜風 大和なる 我松椿 吹かざるなゆめ1-73 長皇子
  

巻 2

   
 み吉野の 玉松が枝は 愛しきかも 君がみ言を 持ちて通はく2-113 額田王 
 磐代の 野中に立てる 結び松 心も解けず 古思ほゆ2-144 作者未詳
 翼なす あり通ひつつ 見らめども 人こそ知らぬ 松は知るらむ2-145 山上憶良
 妹が名は 千代に流れむ 姫島の 小松がうれに 苔生すまでに2-228 河辺宮人
  

巻 3

   
 我妹子に 猪名野は見せつ 名次山 角の松原 いつか示さむく3-279 高市連黒人
 住吉の 岸の松原 遠つ神 我が大君の 幸行処3-295 角麻呂
 岩屋戸に 立てる松の木 汝を見れば 昔の人を 相見るごとし3-309 博通法師
 標結ひて 我が定めてし 住吉の 浜の小松は 後も我が松3-394 余明軍
 昨日こそ 君はありしか 思はぬに 浜松の上に 雲にたなびく3-444 大伴宿禰三中
  
 他に長歌 3-257 3-260 3-431 
  

巻 4・5

   
 白鳥の 飛羽山松の 待ちつつそ 我が恋ひ渡る この月ごろを4-588 笠女郎
 君に恋ひ いたもすべなみ 奈良山の 小松が下に 立ち嘆くかも4-593 笠女郎
 松の葉に 月はゆつりぬ 黄葉の 過ぐれや君が 逢はぬ夜の多き4-623 池辺王
 大伴の 三津の松原 かき掃きて 我立ち待たむ はや帰りませ5-895 山上憶良
  
 他に5-815序  
  

巻 6・7

   
 韓衣 着奈良の里の 妻まつに 玉をし付けむ よき人もがも6-952 車持朝臣千年
 茂岡に 神さび立ちて 栄えたる 千代松の木の 年の知らなく6-990 紀朝臣鹿人
 妹に恋ひ 吾の松原 見渡せば 潮干の潟に 鶴鳴き渡る6-1030 聖武天皇
 我がやどの 君松の木に 降る雪の 行きには行かじ 待ちにし待たむ6-1041 作者未詳
 一つ松 幾代か経ぬる 吹く風の 声の清きは 年深みかも6-1042 市原王
 たまきはる 命は知らず 松が枝を 結ぶ心は 長くとそ思ふ 6-1043 大伴家持
  
 住吉の 沖つ白波 風吹けば 来寄する浜を 見れば清しも7-1159 作者未詳
 朝なぎに ま梶漕ぎ出て 見つつ来し 三津の松原 波越しに見ゆ 7-1185 作者未詳
  

巻 8・9

   
 やどにある 桜の花は 今もかも 松風速み 地に散るらむ8-1458 厚見王
 池の辺の 松の末葉に 降る雪は 五百重降り敷け 明日さへも見む8-1650 作者未詳
 松陰の 浅茅が上の 白雪を 消たずて置かむ ことはかもなき8-1654 大伴坂上郎女
  
 我が背子が 使ひ来むかと 出立の この松原を 今日か過ぎなむ9-1674 柿本人麻呂歌集
 白鳥の 鷺坂山の 松陰に 宿りて行かな 夜もふけ行くを9-1687 柿本人麻呂歌集
 白波の 浜松の木の 手向くさ 幾代までにか 年は経ぬらむ 9-1716 山上憶良
 松反り しひてあれやは 三栗の 中上り来ぬ 麻呂といふ奴9-1783 柿本人麻呂歌集
 妹らがり 今木の嶺に 茂り立つ 夫松の木は 古人見けむ 9-1795 柿本人麻呂歌集
  

巻 10

   
 梅の花 咲きて散りなば 我妹子を 来むか来じかと 我が松の木そ10-1922 作者未詳
 風吹けば 黄葉散りつつ すくなくも 吾の松原 清からなくに10-2198 作者未詳
 あしひきの 山かも高き 巻向の 崖の小松に み雪降り来る10-2313 柿本人麻呂歌集
 巻向の 檜原もいまだ 雲居ねば 小松が末ゆ 沫雪流る 10-2314 柿本人麻呂歌集
  
 他に長歌 10-1937 
  

巻 11

   
 君来ずは 形見にせむと 我が二人 植ゑし松の木 君を待ち出でむ11-2484 柿本人麻呂歌集
 袖振らば 見つべき限り 我はあれど その松が枝に 隠らひにけり11-2485 柿本人麻呂歌集
 千沼の海の 浜辺の小松 根深めて 吾恋ひ渡る 人の児故に11-2486 柿本人麻呂歌集
 奈良山の 小松が末の うれむぞは 我が思ふ妹に 逢はず止みなむ 11-2487 柿本人麻呂歌集
 馬の音の とどともすれば 松陰に 出でてそ見つる けだし君かと 11-2653 作者未詳
 あぢの住む 渚沙の入江の 荒磯松 我を待つ児らは ただひとりのみ 11-2751 作者未詳
  

巻 12・13・14

   
 磯の上に 生ふる小松の 名を惜しみ 人に知らえず 恋ひ渡るかも12-2861 柿本人麻呂歌集
 神さびて 巌に生ふる 松が根の 君が心は 忘れかねつも12-3047 作者未詳
 豊国の 企救の浜松 ねもころに なにしか妹に 相言ひそめけむ12-3130 柿本人麻呂歌集
 薪伐る 鎌倉山の 木垂木る木を まつと汝が言はば 恋ひつつやあらむ 14-3433 東歌
 巌ろの 沿ひの若松 限りとや 君が来まさぬ うらもとなくも 14-3495 東歌
  
 他に長歌 13-3258 13-3324 13-3346 
  

巻 15・17

   
 我が命を 長門の島の 小松原 幾代を経てか 神さび渡る15-3621 作者未詳
 今よりは 秋付きぬらし あしひきの 山松陰に ひぐらし鳴きぬ15-3655 作者未詳
 ぬばたまの 夜明かしも舟は 漕ぎ行かな 三津の浜松 待ち恋ひぬらむ15-3721 作者未詳
 我がやどの 松の葉見つつ 我待たむ はや帰りませ 恋ひ死なぬとに 15-3747 狭野弟上娘子
  
 海人娘子 いざり焚く火の おぼほしく 角の松原 思ほゆるかも 17-3890 三野連石守
 我が背子を 我が松原よ 見渡せば 海女娘子ども 玉藻刈る見ゆ 17-3899 作者未詳
 松の花 花数にしも 我が背子が 思へらなくに もとな咲きつつ 17-3942 平群氏女郎
  

巻 19・20

   
 松陰の 清き浜辺に 玉敷かば 君来まさむか 清き浜辺に19-4271 藤原八束
 松の木の 並みたる見れば 家人の 我を見送ると 立たりしもころ20-4375 物部真島
 松が枝の 地に着くまで 降る雪を 見ずてや妹が 隠り居るらむ20-4439 石川命婦
 住吉の 浜松が根の 下延へて 我が見る小野の 草を刈りそね 20-4457 大伴家持
 ほととぎす かけつつ君が 松陰に 紐解き放くる 月近付きぬ 20-4464 大伴家持
 はしきよし 今日の主人は 磯松の 常にいまさね 今も見るごと 20-4498 大伴家持
 八千種の 花はうつろふ 常磐なる 松のさ枝を 我は結ばな 20-4501 大伴家持
  
 他に長歌 19-4169 19-4177 19-4266 
  


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