あ ぢ
トモエガモ 味 安治 阿遅 安遅
山のはに あぢ群らさわぎ 行くなれど 我はさぶしゑ 君にしあらねば 4−486 岡本天皇 あぢ群の とをよる海に 舟浮けて 白玉採ると 人に知らゆな 7−1299 柿本人麻呂歌集 あぢの住む 渚沙の入江の 荒磯松 我を待つ児らは ただひとりのみ 11−2751 作者未詳 あぢの住む 渚沙の入江の 隠り沼の あな息づかし 見ず久にして 14−3547 東歌 他に長歌 3-257 3-260 4-485 17-3991 20-4360 トモエガモ カモ目 カモ科 あぢとはトモエガモの古名。わが国には冬鳥としてやってくるが、日本海側に多く太平洋側には少ない。顔に特徴があり、黄色、黒色、緑色が複雑な模様を描いており、これを巴形に見立ててつけられたようだ。 あぢとは味が良いという意味だろうか。食べたことがないので分からないが。万葉集では長歌、短歌あわせて9首詠まれているが、内5首に味という字で詠まれている。 いずれの歌もあぢの住むとか、あぢ群あるいはあぢ群騒ぎと詠っているように、あぢが群れをなしている場所を言っている。あぢは群をなして騒々しい鳥と見られていたのだろうか。 486の歌は、485長歌の反歌。歌意は、山の端を、あぢが群をなして鳴き騒ぎながら飛んで行くが、わたしは寂しい。それはあなたではないのですから。 岡本天皇とはどの天皇か。飛鳥・岡本宮にいた天皇は、舒明天皇と皇極天皇(後重祚して斉明天皇)。歌の感じから女帝のように思われるが、舒明天皇という説もあり。万葉集の編者は、左注でいずれを指すのかわからないとしている。 |