やまたちばな
ヤブコウジ 山橘 夜麻多知婆奈
あしひきの 山橘の 色に出でよ 語らひ継ぎて 逢ふこともあらむ 巻4―669 春日王 ヤブコウジ ヤブコウジ科 ヤブコウジ属 ヤブコウジの古吊はやまたちばなで、万葉集に5首詠われています。別吊十両といいます。十両というのは、同じように赤い実をつける千両、万両と比べて、その赤い実が少ないところからそう言われるようになったようです。 ヤブコウジは、高さ10~20cm。林床に這うようにして繫殖するので、草のように見られがちですが、これはれっきとした木です。葉は常緑で、7・8月頃白い花が葉裏に隠れるようにして咲きます。果実は10月頃より赤く熟し、冬を過ごします。 花の少ない時期に、真赤な実がよく目立つので、万葉集では人に知られるとか、目立つという言い方を、やまたちばなの色に出るとか実が照るという表現で詠っています。 歌の意味は、二人の仲は今まで人に知られず隠してきたが、もう我慢できません。いっそのこと顔に出しましょう。そうしたら人にも知られて、大っぴらに逢うこともできるでしょう。ということでしょうか。 その他の山橘の歌 紫の 糸をそ我が搓る あしひきの 山橘を 貫かむと思ひて 巻7*1340 作者未詳 あしひきの 山橘の 色に出でて 我は恋ひなむを 人目難みすな 巻11―2767 作者未詳 この雪の 消残る時に いざ行かな 山橘の 実の照るも見む 巻19―4226 大伴家持 消残りの 雪にあへ照る あしひきの 山橘を つとに摘み来な 巻20*4471 大伴家持 |