さ さ
サ サ 小竹 佐左
笹の葉は み山もさやに さやげども 我は妹思ふ 別れ来ぬれば 2−133 柿本朝臣人麻呂 はなはだも 夜ふけてな行き 道の辺の ゆ笹の上に 霜の降る夜を 10−2336 作者未詳 笹の葉に はだれ降り覆ひ 消なばかも 忘れむと言へば まして思ほゆ 10−2337 作者未詳 馬来田の 嶺ろの笹葉の 露霜の 濡れて我来なば 汝は恋ふばそも 14−3382 東歌 笹が葉の さやぐ霜夜に 七重着る 衣に増せる 児ろが肌はも 20−4431 防人の歌 クマザサ イネ科 ササ属 薄暗い樹林帯を通り抜けると、あたりがぱっと明るくなり、一面の笹原に出くわすことがある。腰まである笹が山道に覆いかぶさり、足元が見えない。うっかりすると段差や岩角に足をとられ、思わぬ事故にもなりかねないこともある。また、早朝露の付いているときや雨後にこんなところを歩くと下半身びっしょりとなってしまう。 いかにも熊が出そうな雰囲気のところに生えているので、熊笹というのかと思っていたら、冬になると葉の縁が枯れて白く隈どられるところから隈笹という名がついたらしい。 筍が成長して皮を落すものを「竹」と言い、枯れるまで皮をつけているものを「笹」 として区分されている。 ササには小さいという意味があり、元は竹の小さいのを笹と言っていたようだ。万葉集5首のうち、3首の原文は「小竹」となっている。 したがって、メダケ属、ヤダケ属、スズタケ属などは、竹と名がついているが、これらはいずれも笹。逆にオカメザサは笹と名がついているがこちらは竹。 万葉集に詠われている「小竹」「佐左」は、笹の総称と思われるのだが。 2−133の歌は題詞にあるように、柿本人麻呂が妻と別れて石見の国を後にし、京へ上るときに詠った歌。み山全体に笹の葉がざわざわとそよぐが、私はそんなことに紛れることなくただひたすら妻を思う。別れてきたのだから。 柿本人麻呂は、万葉集第2期を代表する歌人だが、万葉集以外に記録がなく、出自、経歴、晩年について良く分かっていない。 |