かへるて
イロハモミジ 蝦手 加敝流弖
我がやどに もみつかへるて 見るごとに 妹をかけつつ 恋ひぬ日はなし 8−1623 大伴田村大嬢 子持山 若かへるての もみつまで 寝もと我は思ふ 汝はあどか思ふ 14−3494 東歌 イロハモミジ カエデ科 カエデ属 万葉集に詠われている「かへるで」は「イロハモミジ」のことで、葉の形が蛙の手に似ているということでつけられた。その「かへるで」が縮まって、いま言うところの「カエデ」になった。 高さが10〜15mになる落葉高木。本州(福島以西)〜九州まで、どこででも見られる。もみじを代表する木で、単にもみじといえばイロハモミジ(別名:タカオカエデ、イロハカエデ)を指すくらい。 「もみじ」という語は、木々などが色付くことを言う「もみつ」という四段動詞が、名詞化して「もみち」となったもの。第3音は、万葉時代は清音だったが、平安時代から濁音になったという。 万葉集には、もみじを詠った歌が80余首あるが、かへるでとして詠ったのはこの2首で、いずれも相聞歌。 1622の歌意は、家の庭に 色づいた楓を見るたびに あなたを心にかけて 恋しく思はない日はありません。大伴田村大嬢が妹の坂上大嬢に贈った歌。 3494の歌意は、この子持山の楓の若葉が、色付くまで一緒に寝ていたいと私は思うが、おまえはどう思う。寝もは寝むの訛り。あどはどのようにという東国の方言。 |