う け ら

オケラ   宇家良



恋しけば 袖も振らむを 武蔵野の うけらが花の 色に出なゆめ
                     14−3376 東歌

 或本の歌に曰く
 いかにして 恋ひばか妹に 武蔵野の うけらが花の 色に出ずあらむ

我が背子を あどかも言はむ 武蔵野の うけらが花の 時なきものを
                     14−3379 東歌

安斉可潟 潮干のゆたに 思へらば うけらが花の 色に出めやも
                     14−3503 東歌


 オケラ  キク科  オケラ属

 朮(オケラ)の古名をうけらという。本州から九州にかけて、やや乾いた草原や林縁に生える多年草。高さは30〜60cm位で、先に直径1.5〜2cmくらいの白か少し淡紅色かかった花をつける。花期は9・10月。

 若芽は山菜の一つとして好まれ、根は古くから漢方の胃腸薬として利用されていた。日本書紀 巻29 天武天皇下の、天武天皇14年10月4日の条に、(天皇病気平癒のため)益田直金鐘を美濃に遣わせて白朮を求め、煎じ薬を作らせたとある。

 白くて小さい花は地味であまり目立たない。万葉集でもうけらを詠んだ歌は、うけらのようにあまり目立たないようにという意味で詠われている。

 3376の歌意は、恋しかったら袖でも振りますから、あなたは武蔵野のうけらのように顔色に出さないでください、決して。他人の目を気にしているのだろう。
 これに対して或本の歌の方は、どのように恋したら、うけらの花のように顔色に出さずに済むのだろうか。と3376の歌に応えているようだ。


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