かほばな

ヒルガオ   容花 可保婆奈 可保我波奈



高円の 野辺のかほ花 面影に 見えつつ妹は 忘れかねつも
                     8−1630 大伴家持

石橋の 間々に生ひたる かほ花の 花にしありけり ありつつ見れば
                     10−2288 作者未詳

うちひさつ 宮の瀬川の かほ花の 恋ひてか寝らむ 昨夜も今夜も
                     14−3505 作者未詳

美夜自呂の すかへに立てる かほが花 な咲き出でそね こめてしのはむ
                     14−3575 作者未詳



 ヒルガオ  ヒルガオ科  ヒルガオ属

 昼顔。日当たりの良い草地や路傍でよく見られるつる性の多年草。地下茎を伸ばして繁殖する。葉腋から花柄を出し淡紅色の花をつけるが、花冠の直径が5cmほどの大きさのものをヒルガオ、少し小振りのものをコヒルガオという。

 万葉集で詠まれている「かほばな」に該当するのがこのヒルガオといわれているが、他にカキツバタ、オモダカ、ムクゲなどともいわれている。

 1630は野辺に咲くのでヒルガオ。2288と3505は水辺または水中のようなので、カキツバタまたはオモダカ。3575のすかへは、海岸の砂丘という意味の方言だそうだから、これはヒルガオの仲間のハマヒルガオと思われる。
 となると同じ「かほばな」の名で詠まれていても、歌によって皆異なる花になるのだが。


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