くそかずら
ヘクソカズラ 糞葛
梍筴(さいかち)に 延ひおほとれる 糞葛 絶ゆることなく 宮仕へせむ 巻16−3855 高宮王 アカネ科 ヘクソカズラ属 長く伸びたつる状の茎の先に、釣り鐘状の花をつける。花の先が5弁に分かれており、花の外側とその5弁が白く、内側は濃い紅紫色で可愛い花だ。名をヘクソカズラという。この可憐な花に気の毒な名前が付けられたものだ。 葉や茎をちぎって揉むと、屁や糞のような臭いがするという。それでこの名がついたのだが、試しにに嗅いでみた。ドクダミのような臭いがするものの左程強いようには思わなかった。嗅覚が衰えてきたのだろうか。 日本各地の日当たりの良い土手や草地に生える多年草。つる性の花で、どこにでも巻きついていく。古く万葉の時代から一貫してクソカズラと呼ばれてきたのだが、ヤイトバナやサオトメバナの別名もある。ヤイトバナは花の内側の色がやいとの痕に似ているところから。サオトメバナは早乙女が田植えをする頃に咲くところからつけられたというが、こちらの方が可愛い。 万葉集に詠まれているのはこの1首だけ。歌意は、さいかちの木に延びまつわるくそかずら。そのクソカズラのように、絶えることなくいつまでも宮仕えしていこう。 題詞に、数種の物を詠む歌とあるように、2種の草木を詠っている。さいかちは洗剤にもなる清浄感のある木。さいかちを宮廷に、くそかずらを卑下して自分に充てているのか。洗剤と糞の組み合わせが面白い。巻16には思わず吹き出してしまいそうな歌が沢山集められている。 |