ね ぶ
ネムノキ 合歓木
昼は咲き 夜は恋ひ寝る 合歓木の花 君のみ見めや 戯奴さへに見よ 8−1461 紀女郎 我妹子が 形見の合歓木は 花のみに 咲きてけだしく 実にならじかも 8−1463 大伴家持 我妹子を 聞き都賀野辺の しなひ合歓木 我は忍び得ず 間なくし思へば 11−2752 作者未詳 ネムノキ マメ科 ネムノキ属 本州から沖縄にかけて生える落葉高木。6月から7まで花が咲くが、綺麗なピンク色のものは沢山の雄しべ。葉は昼は開いているが、夕方になると閉じて垂れ下がり、眠ったようになるので、この名がついた。 合歓の字は、葉が合わさるのを男女の交合にたとえたもの。 1461、1463は相聞歌。夜は恋寝る合歓の花、そんな花を私だけ見ているのではなく、あなたも見なさい、と誘いをかけているのでしょうか。それに対して1463の歌は、贈って頂いた合歓は花だけで、実にはなりませんね、とやんわり断っている。 紀女郎は安貴王の妻。その安貴王は志貴皇子の孫に当たるが、因幡の八上采女を娶り、天皇から不敬の罪に定められ失脚する。その後に紀女郎と家持の間に歌の遣り取りがあったというから、紀女郎も寂しかったのかもしれない。 家持は紀女郎の夫である安貴王の後輩で年も紀女郎より下だった。したがって、1461の君は本来女性から見た男性のことを言うのだが、紀女郎はここでは家持に対して主人という意味で自分のことを言っている。戯奴(わけ)は、自分のことをへりくだって言う場合と、年下の相手にいう場合がある。どちらも冗談めかして言うことがある。 したがって、この歌の遣り取り、年上の紀女郎が年下の家持に冗談めかして口説いたということでしょうか。ちょっときわどいですね。 |