あさがほ

キキョウ   朝杲 安佐我保



秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花
                       8−1537 山上憶良

萩の花 尾花葛花 なでしこが花 をみなへし また藤袴 朝顔の花
                       8−1538 山上憶良

朝顔は 朝露負ひて 咲くといへど 夕影にこそ 咲き増さりけれ
                    10−2104 作者未詳

臥いまろび 恋ひは死ぬとも いちしろく 色には出でじ 朝顔が花
                    10−2274 作者未詳

言には出でて 君はばゆゆしみ 朝顔の ほには咲き出ぬ 恋もするかも
                    10−2275 作者未詳

我が目妻 人は放くれど 朝顔の としさへこごと 我は離るがへ
                    14−3502 作者未詳


キキョウ キキョウ科 キキョウ属

 日本全国に分布し、日当たりの良い草地に生えている多年草で、根は咳止めなどの薬草として用いられていた。50〜100cmの真直ぐ伸びた茎の先に青紫の星型をした鐘状の花をつけた姿は、清楚で古くから多くの人に親しまれてきた。

 俳句の季語では初秋になっていて、秋の花だとばかり思っていたが、実際には6月頃から咲き始めている。

 万葉集に詠まれている「あさがほ」は、キキョウ、ムクゲ、ヒルガオ、アサガオといろいろ論議されてきたようだが、今ではキキョウで定着している。
 今のアサガオは、奈良時代末期から平安時代の初期に種を薬用として遣唐使が中国から持ち帰ったものだというから、万葉集の時代(万葉集最後の歌は、759年の新しき年の初めの…の歌)にはまだなかった。ムクゲ、ヒルガオも他の花と並べてみた場合やはりしっくりこないのではないだろうか。

 1537の歌は、山上憶良が子供たちを前にして、両手の指を折りながら一つ一つ丁寧に七草の花を教えているのではないだろうか。そんな様子が目に浮かんでくる。

 
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