つ ぎ ね

フタリシズカ  次 嶺



つぎねふ 山背道を 他夫の 馬より行くに 己夫し 徒歩より行けば 見るごとに 音のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し たらちねの 母が形見と 我が持てる まそみ鏡に 蜻蛉領布 負ひ並め持ちて 馬買へ我が背
                       13−3314 作者未詳



 フタリシズカ センリョウ科 センリョウ属

 北海道から九州にかけて、山野の林内に生える多年草。2〜6cmの花穂を2本付けるものが多いところからフタリシズカと名付けられた。シズカは義経の愛人静御前。2本のうち1本はその亡霊に見立てている。
 春の低山歩きをしていると良く見かけるが、良く見ると花穂が1本のものもあり、ときには3〜5本のものも見かける。

 つぎねふは、ここでは山背にかかる枕詞。歌意は、山背への道をよそのご主人は馬に乗って行くのに、私の夫は歩いて行く。それを見ると泣けてくるし、それを思うと心が痛む。母の形見に私が持っているますみ鏡と蜻蛉領布を、どうか持っていってこれで馬を買ってくださいなあなた。
 ちょっとほろりとさせられる。これは問答歌で、答歌は3317の歌。

 馬買はば 妹徒歩ならむ よしゑやし石は踏むとも 我は二人行かむ
                          13−3317

 馬を買えば、(私は良いが)お前は歩いて行かなければならない。えいままよ、石は踏んでも二人は歩いて行こう。
 さらにほろりとさせられます。ところで前の歌では夫を送り出す時のように受け取れるが、後の歌では一緒に行こうとしているようにも思えるが、はてどちらだろう。



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