からたち

カラタチ   枳



からたちの 茨刈り除け 倉建てむ 屎遠くまれ 櫛造る刀自
                    16−3832 忌部首


 北原白秋の歌に、からたちの花というのがある。
  からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ
  からたちのとげは痛いよ 青い青い針のとげだよ
 花の特徴をよく歌っており、この歌を知っておれば、からたちを初めて見た時でもすぐそれと分かるだろう。

 からたちは中国原産の落葉低木で、高さは2、3m位。4、5月に白い可愛い花をつけるが、枝には1から4cm位の太く鋭い刺がある。まるで有刺鉄線のようで、下手に触ると痛い目に合う。このため、生け垣などに植えられているところが多い。

 この刺が災いしてか、昔からあまり良くは思われていなかったようで、枕草子(157段)にも、「名おそろしきもの」として、雷・なわ莚(蛇)・強盗・生霊などとともに、からたちがあげられている。

 万葉集にも、からたちを詠った歌はこの1首のみ。あまり上品な歌とは思えないが、この歌の題詞に、忌部首数種の物を詠む歌とあるように、周りで目に付いたものであろうか、からたち・茨・倉・屎・櫛を1句ずつに詠み込んでいる。
 宴席での余興の歌と思われるが、このような戯笑歌が巻16には数首集められている。

 歌意は、からたちの茨を刈り取ってそこに倉を建てるのだ、だから糞はもっと遠くでやってくれ、櫛造りのおばさんよ。


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