すもも
スモモ 李
わが園の 李の花か 庭に散る はだれのいまだ 残りたるかも 巻19ー4140 大伴家持 バラ科 サクラ属 スモモはモモと同様中国原産で、古くから日本に渡来して果樹として広く栽培されてきた。3〜4月頃葉腋に直径1〜1.5cmくらいの白い花を1〜3個咲かす。夏に果実となり熟すと食べられるが、日本名で酸桃と書くように酸味がある。但し食べるようになったのは後のことで、この頃は桃と同じく観賞用として栽培されていたようだ。 歌意は、わが園の李の花が庭に散っているのだろうか、それとも薄雪がまだ残っているのだろうか。 この歌の題詞に、「天平勝宝2年3月1日の暮に、春苑の桃李の花を眺めて作った2首」とある。天平勝宝2年は家持は越中守として越中高岡に赴任していた。3月1日は太陽暦で4月11日というから、越中ではあるいは残雪があったのかもしれない。散花と見るかはだれ雪と見るか、家持の感性の豊かさを思わせる。 この頃家持の妻の坂上大嬢も高岡に来ていたので、家持も充実した気持ちで妻と桃李の花を観賞していたのではないだろうか。 2首のうちもう1首は良く知られた歌。 春の園 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つ娘子 巻19−4139 大伴家持 |