う は ぎ
ヨメナ 宇波疑 菟芽子
妻もあらば 摘みて食げまし 沙弥の山 野の上のうはぎ 過ぎにけらずや 2−221 柿本朝臣人麻呂 春日野に 煙立つ見ゆ 娘子らし 春野のうはぎ 摘みて煮らしも 10−1879 作者未詳 ヨメナ キク科 ヨメナ属 一般にノギクと言っているが、ノギクという種はなく、鑑賞用の栽培菊に対して野生の菊をノギクと言っている。ヨメナ・カントウヨメナ・ユウガギク・ヤマジノギク・ノコンギクなど野生の菊の総称で、交雑種を含めるとその数100を超えるという。が、その区別は難しい。 春の摘み草の代表格がヨメナ。若葉の香りが良く、菜飯・天ぷら・和え物・汁の実など食用として好まれている。が、これは中部以西に生えるヨメナで、関東以北に生えているのはカントウヨメナ。こちらは葉も堅く、香りもないので食用としては適していないようだ。 このヨメナ、万葉の頃には「うはぎ」と呼ばれており、万葉集にも2首詠われている。当時から食用として春の野で採られていたことがよく分かる。 221の歌意は、ここに妻がいたら、一緒に摘んで食べることができただろうに、沙弥の山の野の嫁菜はもう時期が過ぎてしまった。 人麻呂が、讃岐の狭岑の島(坂出市沙弥島)で妻にも知られず死んだであろう死人を見て悲しんで詠った歌。220の長歌に対する反歌。 1879の歌は、一転して春の野の楽しい摘菜をする様子が伺える。春日野に煙が立っているのが見える。おとめたちが春の野の嫁菜を摘んで煮ているらしい。題詞では煙を詠んだ歌とある。 |