たまばはき

コウヤボウキ   玉箒  多摩婆波伎



 玉掃 刈り来鎌麻呂 むろの木と 棗が本と かき掃かむため
                巻16−3830 長忌寸意吉麻呂

 初春の 初子の今日の 玉箒 手に取るからに 揺らく玉の緒
                巻20ー4493 大伴宿禰家持


 キク科、コウヤボウキ属。キク科は草本だがコウヤボウキは木本。関東から九州にかけての山地や丘陵の日当たりの良い場所に生える草本のような小低木。高さは60〜100cmで、根元から枝分かれし、その先に頭状花をつける。

 枝は細くて硬いので、この枝を束ねて箒を作っていた。後に高野山で多く作られていたので高野箒の名が付けられ、それが木の名前になったという。

 3830の歌意は、玉箒を刈って来い鎌麻呂よ、むろの木と棗の木の下を掃除するのだから。
 宴会の席で、玉掃、鎌、むろ、棗の4つの題を与えられて意吉麻呂が詠んだ歌。巻16にはこのような戯笑歌が多く収録されている。

 4493の歌意は、新春の初子の今日の玉箒、手に取るだけでゆらゆらと揺れ鳴る玉の緒よ。

 初子は、旧暦正月の最初の子の日。この時は天平宝字2年1月3日。玉=魂で、魂を掃き寄せるまじないとして箒に飾った。この日玉箒が下賜され、おのおの自由題で歌を作れとの勅があった。
 家持はこの日のために上の歌を作っておいたのだが、結局大蔵省の勤務の都合で出席できず、奏上できなかったという。


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