かまめ・みやこどり
ユリカモメ   加万目 美夜故杼里  



大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば
国原は 煙立ち立つ 海原は かまめ立ち立つ うまし国そ あきづ島
大和の国は
                    1−2 舒明天皇

舟競ふ 堀江の川の 水際に 来居つつ鳴くは 都鳥かも 
                    20−4462 大伴宿禰家持


 ユリカモメ チドリ目 カモメ科

 カモメは古く万葉の時代から知られていた。しかし、万葉集には2首しか詠われていない。カモメの仲間は沢山居るが、上記2首に詠われているカモメはユリカモメと思われる。

 ユリカモメは冬鳥で、主としてカムチャッカ半島から渡ってくるという。北海道から沖縄にかけての太平洋側に飛来するものが多く、川に沿って川の上流や、かなり内陸部の湖沼まで入ってくる。

 大和盆地には溜池が多い。また、古墳の堀なども沢山あり、明日香の地には埴安池、耳成池、磐余池など大きな池もあった。天の香具山に登って見下ろしたとき、これらの池を海原とみなしていた。そこに大和川に沿ってユリカモメが飛来し、舞っていた。

 みやこどりはユリカモメの古名。伊勢物語に出てくる、隅田川を渡るときに見た「白き鳥の嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる」鳥を、船頭に都鳥と教えてもらったが、その姿・形からこれは今のユリカモメ。春日部の春日部八幡神社参道入口に、その都鳥の碑がある。
 なお、今ミヤコドリというのが居るが、これはチドリ目ミヤコドリ科の鳥で、ユリカモメとは別。

 万葉集には、鳥として詠われている歌が50余首ある。よく吟味すれば、詠われている状況等から他にもユリカモメがいるかもしれない。



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