ひ  め

シメ    比米 



近江の海 泊まり八十あり 八十島の 島の崎々 有り立てる 花橘を 上枝に もち引き掛け 中つ枝に いかるが掛け 下枝に ひめを掛け 汝が母を 取らくを知らに 汝が父を 取らくを知らに いそばひ居るよ いかるがとひめと
                        13*3239 作者未詳



 スズメ目 アトリ科 シメ属

   イカルとよく似ているが、イカルの23cmに比し19cmと少し小さい。 主として冬鳥として渡ってくるが、日本でも北海道から中部以北で繁殖し、冬には南下してくる。
 現代漢字吊は鴲と書くが、焼き鳥にでもすると旨いのだろうか。万葉の頃からひめ、しめと呼ばれていた。

 万葉集では、長歌1首と巻1*6の左注のみに登場する。巻1*6の左注は。
 「舒明天皇、伊予の温湯の宮に幸すとき、宮の前に二つの樹木あり。この二つの樹に、斑鳩と比米との二つの鳥大く集けり。時に勅して、多く稲穂を掛けてこれを養はしめたまふ。《とあり、ここでもイカルと一緒だ。

 3239の歌意は、近江の海には沢山の港があり、その沢山の崎に生い立つ花橘の上の枝にとりもちを掛け、中の枝にいかるがを止まらせ、下の枝にひめを止まらせ、自分の母が捕られるのも知らず、自分の父が捕られるのも知らず、ふざけ合っているよ、いかるがとひめが。



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