さ  ぎ

サギ   白鷺 白鳥 



 鷺坂にして作る歌1首
白鳥の 鷺坂山の 松陰に 宿りて行かな 夜もふけ行くを
                  9−1687 柿本人麻呂

 白鷺の木を啄ひて飛ぶを詠む歌
池神の 力士舞かも 白鷺の 桙啄ひ持ちて 飛び渡るらむ
                 16−3831 長忌寸意吉麻呂

 サギ科の仲間には、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギ、アマサギ他いくつかの仲間が居るが、万葉の時代、白い鷺は大・中・小の区別がなく、鷺、白鷺、白鳥と呼ばれていたようだ。

 このうち、コサギ、アオサギは留鳥だが、他は夏鳥(一部冬鳥)。いずれも河川、湖沼、水田、湿地などで魚や蛙、ザリガニなどを獲っている。

 鷺はたいへん身近な鳥だが、万葉集に鷺として詠われているのはの2首だけというのはいかにも少ない。白鳥、鶴などとともに、白い大きな鳥を総称しての鶴として詠われていたのではないだろうか。鶴(たず)として詠われているのは45首ある。

 1687の歌意は、(白鳥の)鷺坂山の 松陰に 泊まって行こう もう夜もふけたことだし。白鳥は鷺坂山にかかる枕詞なので、この白鳥は鷺のこと。

 3831の歌意は、池神の 力士舞なのだろうか 白鷺が 桙をくわえ持って 飛び渡っているのは。
 力士舞は伎楽の中に、呉女という美女を追う怪物崑崙の男根を、金剛力士が桙で打ち落として振りまわすという、俗に「まらふり舞」という舞がある。題詞にある白鷺が木を咥えて飛んでいる姿が似ているというので詠ったものか。  

 

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