をしどり
オシドリ   鴦 鴛鴦 男為鳥 乎之杼里 



人漕がず あらくも著し 潜きする 鴛鴦とたかべと 舟の上に住む
                 3−258 鴨君足人

妹に恋ひ 寝ねぬ朝明に 鴛鴦の こゆかく渡る 妹が使ひか
                 11−2491 柿本人麻呂歌集

磯の裏に 常夜日来住む 鴛鴦の 惜しき我が身は 君がまにまに
                 20−4505 大原今城真人

鴛鴦の住む 君がこの山斎 今日見れば あしびの花も 咲きにけるかも
                 20−4511 三形王



 オシドリ カモ目 カモ科

 日本書記、孝徳天皇の大化5年3月の条に、「山川に 鴛鴦双つ居て 匹ひ好く 匹へる妹を 誰か率にけむ」と詠われているように、古くから雌雄仲の良い鳥として知られている。

   鴛鴦の契りという言葉がある。雌雄仲良く寄り添っている姿から夫婦仲の睦ましいことのたとえだが、ふつうおしどり夫婦といっている
 現実のオシドリはどうだろう。大抵の鳥は雌雄で子育てをするが、このオシドリ子育ては雌に押し付け雄はさっさと何処かへ行ってしまい、翌年は又別の雌と番になるという

 258の歌意は、人が漕がなくなったのははっきりしている。水に潜るおしどりとたかべが舟の上に住みついている。
 これは257の長歌を受けての反歌で、その長歌と左注によると、この歌は平城京に遷都した後に作られたと考えられている。天の香具山の近くにある池で、大宮人が宮中から退出した後舟遊びした舟も、今は棹も梶も、漕ぐ人もなく、ただその舟だけが岸辺に打ち捨てられている。そんな寂しい様子が伺え、作者は在りし日の華やかな日々を偲んでいるのでしょうか。
 たかべは、コガモのこと。  


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