しながどり

カイツブリ(2)  志長鳥 四長鳥 水長鳥



しなが鳥 猪名野を来れば 有間山 夕霧立ちぬ 宿りはなくて
                       7−1140 作者未詳

大き海に あらしな吹きそ しなが鳥 猪名の湊に 舟泊つるまで
                       7−1189 作者未詳

しなが鳥 安房に継ぎたる 梓弓 末の珠名は 胸別の 広き我妹 腰細の すがる娘子の その姿の きらきらしきに 花の如 笑みて立てれば 玉桙の 道行き人は 己が行く 道は行かずて 呼ばなくに 門に至りぬ さし並ぶ 隣の君は あらかじめ 己妻離れて 乞はなくに 鍵さへ奉る 人皆の かく迷へれば うちしなひ 寄りてそ妹は たはれてありける
                       9−1738 高橋虫麻呂

しなが鳥 猪名山とよに 行く水の 名のみ寄そりし 隠り妻はも(一に云ふ、「名のみ寄そりて 恋ひつつやあらむ」)
                       11−2708 作者未詳



 写真の鳥は、カンムリカイツブリ 冠鳰 カイツブリ目 カイツブリ科

 しながどりはカイツブリの異名。写真のカンムリカイツブリをしながどりと言っていたという意味ではない。
 冬鳥または旅鳥。生息環境その他はカイツブリと同じ。カイツブリについで良く見るが、万葉の時代はどうだったのだろう。

 しながどりの「し」は息という意味。カイツブリは息長く潜水するところからそう呼ばれたという。万葉集のこの4首ではいずれも猪名、安房にかかる枕詞となっている。

 1738は、安房の美女珠名の伝説に取材した歌。高橋虫麻呂はこのほか、真間の手児奈や浦島伝説による歌でも知られるように、伝説歌人として知られている。

 



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