あ と り

アトリ   阿等利 



国巡る あとりかまけり 行き巡り 帰り来までに 斎ひて待たね
                    20ー4339 刑部虫麻呂



 アトリ スズメ目 アトリ科

   わが国には冬鳥として大群で渡ってきて、群れで生活をし、地上や木の枝を飛び渡りながら草木の種子を採取している。春先には小群となる。

 奈良時代から あとり として知られており、日本書紀の巻29、天武天皇7年12月27日の条に
 臘子鳥が空を覆って、西南より東北に飛んだ。
とあり、同じく9年11月26日の条に
 臘子鳥が天を覆って東南から西北に飛んでいった。
とある。いずれも南から北へ大群で渡って行くときの様子が伺える。

 原文の、阿等利加麻気利、の意味はよく分からないが、アトリ、カモ、ケリとする説が多い。即ちこれらの鳥は渡り鳥(ただし鳧は本州中部では留鳥)として、国々を巡る旅人の譬えとしている。
 この歌は、防人の旅立ちの歌で、国々を渡っているあとり、かも、けりのように、私も国々を行き巡って帰ってくるまでは、身を慎んで待っていてくれ、との意。  



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