やまあゐ

ヤマアイ   山藍



しなでる 片足羽川の さ丹塗りの 大橋の上ゆ 紅の 赤裳裾引き 山藍もち 摺れる衣着て ただひとり い渡らす児は 若草の 夫かあるらむ 橿の実の ひとりか寝らむ 問はまくの 欲しき我妹が 家の知らなく
               巻9-1742 高橋虫麻呂

ヤマアイ  トウダイグサ科 ヤマアイ属 

   ヤマアイは山地の林中に生える多年草。本州から沖縄にかけて分布しているという。草丈は40cmくらい。地下茎を伸ばして増える。対生する葉腋から長い花柄を伸ばし、白い小花を数個付ける。花弁はなく、花弁に見えるのは萼。雌雄異株で、雄花には雄蕊が多数あり、雌花には雌蕊が1本。

 日本最古の染料植物で、葉を突き砕いて汁を採り染料にし摺染に使っていた。色は名前から想像する藍色ではなく緑色。藍染に使う藍はタデ科の植物。

 そんな緑色の衣を着て、赤色の裳裾を引きながら丹塗りの橋を渡っていく娘子を詠っているが、大変カラフルな歌だ。

 歌意は、片足羽川に架かる丹塗りの大橋の上を、紅色の裳裾を引いて、山藍で染めた衣を着て、ただひとり渡って行くあの子は夫がある身なのか、それとも一人寝しているのだろうか。聞いてみたいが家も分からない。

 しなでるは片の、若草のは夫の、橿の実は一人の、それぞれ枕詞。片足羽川に架かる大橋は何処かわからないが、題詞に河内の大橋とある。片足羽川は大和川の異名との説もあり、現在の柏原市と藤井寺市の間に架かっていた橋という説が有力。


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