わ ら び

ワラビ   和良妣



石走る 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも
                       8−1418 志貴皇子


ワラビ ワラビ科 ワラビ属

 日当たりの良い山地に生える多年生のシダ。高さは1m以上にもなる。
 若葉は拳のように巻いている。このころ採ってあく抜きをして食べる春の山菜の代表格。根茎から採る澱粉はわらび粉といってわらび餅などにして食べる。  

 歌は、岩の上を勢いよく流れる垂水のほとりに蕨が芽を出しはじめた。ああ、さわらびの萌出づる春になったのだ。題詞にあるように、春の訪れの喜びを全身で表しているようだ。輝きのある、そして力強く流れるようなリズム感のある歌で、好きな歌の一つだ。

 壬申の乱で勝利した天武天皇は、天武の皇子草壁、大津、高市、忍壁と、天智の皇子川島、志貴の6人の皇子が結束するよう、吉野で誓約させた。
 志貴皇子は天智の皇子であるが故に不遇だったのではないだろうか。だが志貴皇子が亡くなって54年後、志貴皇子の皇子白壁王が光仁天皇となる。この歌が詠われてからずっと後のことだが、そんな喜びを思わせるような歌だ。  

 
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