しばくさ

チカラシバ   芝草 志婆草 柴草



立ちかはり 古き都と なりぬれば 道の芝草 長く生ひにけり
                          6−1048 田辺福麿の歌集 

畳み薦 隔て編む数 通はさば 道の柴草 生ひざらましを
                         11−2777 作者未詳



 チカラシバ イネ科 チカラシバ属

 日本全国で道端の草地に生える多年草。このことからミチシバの別名があるが、土に根をしっかりとはっており、なかなか引き抜けないところからチカラシバの名がついた。高さは50〜80cmで、先に10〜20cmの花序をつけ、8mm位の小花2つからなる小穂を沢山つける。花期は8〜11月。

 歌の芝草がチカラシバと同定されたのはよく分からない。ほかにコウライシバやノシバなどもあり、単に雑草と解釈するものもある。

 1048の歌意は、移り変わり、古い都となってしまったので、道の芝草も長く伸びてしまった。
 この前の長歌の題詞から、聖武天皇が平城京から恭仁京に都を遷した後(740年)、荒れた故郷を悲しんで作った歌と分かる。都はこの後難波宮、紫香楽宮と遷り、745年に再び平城京に戻り、784年に長岡京に遷るまで続いた。

 中学生の頃、この平城宮址の縁に沿って通学していたが、身の丈を越す雑草が生い茂り、迷い込んで行き倒れたら発見されないだろうなと思った。まさか1200年前の雑草とは思わないが、その後どのような変遷を繰り返してきたのだろうか。
 そんな場所から煌びやかな宮殿を想像することもできなかったが、いま大極殿や朱雀門などが復元され、当時の姿が蘇ってきた。これも想像していなかったことだが。  



ホーム トップ