< チガヤ

つ ば な

チガヤ   茅萱 茅 茅花



戯奴がため 我が手もすまに 春の野に 抜ける茅花そ 召して肥えませ
               8*1460 紀女郎

我が君に 戯奴は恋ふらし 賜りたる 茅花を食めど いや痩せに痩す
               8*1462 大伴家持 


チガヤ イネ科 チガヤ属

 日当たりの良い河原などに生える多年草で、日本全土に分布している。

 草丈は30~80cm位でススキよりやや低い。先に花穂を付け、暗紫色の花が咲く。花後は白い綿毛状の穂となるが、これが群れて風に靡いている様は美しい。チガヤのチは千で、群生するところから沢山という意味でチの字を充てられたらしい。

 根茎は利尿作用があり、漢方薬としても利用される。花穂を噛むと甘く、古くから食用にもされていた。葉は屋根の材料として使われたほか、魔除けの力があると言われ、「茅の輪潜り《の輪や、粽の材料などにも使われていた。

 1460の歌は、紀女郎が大伴家持に合歓の花と一緒にチガヤを贈った時に添えた歌。歌意は、そちのため私が休まずに春の野で抜いておいた茅花ですよ。これを食べて太りなさい。家持はそんなに痩せていたのか。

 これに答えた家持の1462の歌意は、我が君に私は恋をしているらしい。いただいた茅花を食べましたが、ますます痩せるばかりです。

 戯奴はわけと読み、その意味は、①年下の相手に親しみを込めて冗談ぽくいう言葉。②自分のことをへりくだって言う言葉。いずれも冗談めかして言う。

 紀女郎は安貴王の妻。生没年は上詳であるが、家持よりは年上であったらしい。これは戯歌である。二人は歌を通して親交があった。    

 
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