せ り

セリ   芹子 世理



あかねさす 昼は田賜るびて ぬばたまの 夜の暇に 摘める芹これ
            巻20-4455 葛城王

ますらをと 思へるものを 大刀佩きて 爾波の田居に 芹そ摘みける
            巻20-4456 薜妙観命婦


セリ セリ科 セリ属

 横に伸びる地下茎の節から新芽を出し、その高さを競り合っているように見えるところから「セリ」と名付けられたというのが名前の由来というから、分かりやすくて面白い。

 セリ科セリ属の多年草で、全国各地の水田や湿地、小川の辺などに生える。7〜8月に、花茎の先に花序を付け、直径2〜3mmの白い小さな花を多数咲かせる。

   古くから春の摘草を代表する野草として好まれており、春の七草の筆頭にあげられている。葉に独特の香りがあり、雑煮・鍋物・汁物の具として食されている。よく似たドクゼリには猛毒があるので注意が必要。

 4455の歌は、葛城王が班田使として行った先で、薜妙観命婦にセリに添えて贈った歌。歌意は、昼は班田収授の仕事で忙しかったのですが、夜の間に摘んだ芹ですこれは。どうぞ召し上がってください。ということか。葛城王は、臣籍降下した橘諸兄の前の名。

 それに応えた歌が4456。まあ、立派なお役人だと思っていましたのに、大刀を佩いたまま加爾波の田圃で、芹なぞお摘みになっておられたとは。
 この2首は、天平元年11月28日の宴で橘諸兄が誦詠した古歌という。
 集中、芹を詠ったのはこの2首。

 
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