おもいぐさ

ナンバンギセル   思草



道の辺の 尾花が下の 思ひ草 今更々に 何か思はむ
                    巻10-2270 作者未詳


 ナンバンギセル  ハマウツボ科 ナンバンギセル属

  主としてススキの根に寄生して養分を吸収する1年草の寄生植物。夏の終わりから秋にかけて15〜20cmの花柄を伸ばし、その先に淡紫色の花をつける。

 花の形が西洋のパイプ(煙管)に似ているところからナンバンギセルと付けられた。

 この花、万葉人は地上から立ち上がって面をうつむき加減にしている様子を、人が物思いにふけっているように見て思い草と付けた。ではなで思い草がナンバンギセルなのか。他にもリンドウ、ツユクサ、オミナエシなど古くから議論されてきたが、歌の「尾花が下の思ひ草」とあるところから、いまではナンバンギセルが定説となっている。

 山を歩いていて、ギンリョウソウというやはり同じ寄生植物を見たことがある。形はキセルに似ているが、議論の対象にならなかったのは山地の湿り気のある所に生えるのであまり目にする機会が無く一般的でなかったせいかもしれない。

万葉集ではこの1首のみ。
歌意は、道端の 尾花の陰の 思い草のように 今更改めて 何を思い迷ったりしましょうか


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