な で し こ

カワラナデシコ   石竹 瞿麦 奈泥之故 奈弖之故



秋さらば 見つつしのへと 妹が植ゑし やどのなでしこ 咲きにけるかも
                      3−464 大伴家持


カワラナデシコ ナデシコ科 ナデシコ属

 なでしこは、山上憶良の歌でも知られるように、秋の七草の一つ。いま該当する名前はカワラナデシコ。カワラと言っても河原だけに咲いているものではなく、日当たりの良い山野に自生する多年草。

 別名大和撫子とも言うが、これは後に唐撫子が移入されたので、区別するために呼ばれたものらしい。枕草子70段に、「草の花は なでしこ、唐のはさらなり、やまともめでたし。」とあるから、唐撫子は平安時代の初め頃入ってきていたものと思われる。

 清楚な美しさで、か弱そうに見え、撫で慈しみたくなるということで、撫でし子となったそうだが、そんな恋しい女性を想って詠った歌が多い。

 464の歌は、家持が初めて愛した妻を亡くしたときの悲しみを詠った歌の一つ。秋になったら花を見つつ私を偲んでくださいね、と言って植えた庭のなでしこの花がもう咲き始めた、というもの。秋になったらというが、この歌は夏6月に詠まれたもので早く咲いたが、亡き妻は自分の運命を知っていて、花の咲くのを見ることは出来ないと思っていたのだろう。    

 
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