からあゐ

ケイトウ  韓藍 辛藍 鶏冠草



我がやどに 韓藍蒔き生ほし 枯れぬれど 懲りずてまたも 蒔かむとそ思ふ
                3−384 山部宿禰赤人

秋さらば 移しもせむと 我が蒔きし 韓藍の花を 誰が摘みけむ
                7−1362 作者未詳

恋ふる日の 日長くしあれば み園生の 韓藍の花の 色に出でにけり
               10−2278 作者未詳

隠りには 恋ひて死ぬとも み園生の 韓藍の花の 色に出でめやも
               11−2784 作者未詳


ケイトウ  ヒユ科  ケイトウ属

 以前は民家の庭先や畑の隅に咲いているのを良く見かけたが、この頃はあまり見られなくなったように思うのはどうしたことだろう。

 花の形が鶏の雄の鶏冠に似ているところが鶏頭(ケイトウ)の名の由来。熱帯アジアの原産で、わが国には古く中国経由で渡来し、奈良時代には観賞用として栽培されていた。また、花を摘んで汁を絞り、染料としても用いられていたという。

 万葉人はこの花を若い娘に譬えていた。赤人の歌は、我が家の庭に韓藍を植えて育てていたが、枯れてしまった。懲りずにまた新しく蒔こうか。という意だが、これを娘に譬えると、我が妻にしようと折角可愛がっていた娘なのに、ある日他人のものとなってしまった。また懲りずに別の娘を捜そうかということか。1362の歌も似たようなもの。

 また、南国特有の真紅の花は情熱的な恋を連想させる。2278の歌は、恋焦がれて月日を重ねてしまった。もう我慢が出来なくて庭の韓藍の花の色のように思いをはっきりと表に出してしまった。


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