は ち す

ハス   蓮



蓮葉は かくこそあるもの 意吉麻呂が 家なるものは 芋の葉にあらし
                    16−3826 長忌意吉麻呂

勝間田の 池は我知る 蓮なし 然言ふ君が ひげなきごとし
                    16−3835 婦人

ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に 溜まれる水の 玉に似たる見む
                    16−3837 作者未詳

他に長歌 13−3289



 ハス スイレン科 ハス属

 ハスは、中国から日本に渡来したものといわれるが、古くから日本にも自生していたとも言われている。

 池や沼などに生える多年草。ハスは朝開花して夕方には閉じてしまう。これを3日ほど繰り返した後花弁は散ってしまう。如雨露のように見える果床は、蜂の巣に似ているところから「はちす」といっていたが、これが「はす」に転訛された。花の後地下茎は肥大し、これがレンコンで食用となる。

 3835の歌意は、勝間田の池は私も知っていますよ。あそこには蓮なんて咲いていませんよ。そう言うあなたのお顔に髭が無いのと同じように。
 これは、天武天皇の皇子、新田部親王が勝間田の池まで遊びに出かけて、そこで見た蓮の花のことを怜愛に忍びず、側近たちを集めた席で、「蓮花灼々なり、可怜きこと腸を断ち、得て言ふべからず」と話して聞かせたのに対して婦人が応えたもの。その後に、あなたの仰っているのは、蓮は蓮でも別のきれいなお方のことではないのですか、といいたかったのではないでしょうか。新田部親王の話しぶりから見て図星のようですね。
 婦人とは側近の女人のこと。勝間田の池は唐招提寺近くにあったというが、はっきりしない。



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