ふじばかま

フジバカマ   藤袴



秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花  その一
                    8−1537 山上臣憶良

萩の花 尾花葛花 なでしこが花 をみなへし また藤袴 朝顔が花
                                   その二
                    8−1538 山上臣憶良





 フジバカマ キク科 フジバカマ属

 関東以西の川の土手などに野生するというが、野生のものはあまり見かけない。秋の七草の一つ。
 中国原産で、奈良時代に中国から渡来したものといわれている。葉は生乾きのとき桜餅の葉と同じ香りがするので、身につけたり風呂に入れたりしていたという。  

 フジバカマを詠った歌はこの1538の1首しかない。
 しかし、前句1537にその一、そして1538にその二とあるように、これは2首がセットになっている。
 1538の歌は単に七草の名前を並べただけの単純な歌ではなく、ここでは「指(および)折り」「かき数える」「また」のことばが大変意味のあるもので、大人が両手の指を使って、子供に七つの草を一つ一つ教えている動作を投影させている。(伊藤博 万葉集)

 そうして見ると、秋の野で、お爺ちゃんが、孫か近所の子供を相手に秋の七草を教えている。両掌を広げて、まず右手から萩、尾花、葛花、なでしこ、をみなえしと数えて5本の指を折る。そして今度は左を出して、また(この また がそんな動作を良く表わしている)藤袴、朝顔と数えて、これで七種だよ。わかった? 良く憶えておくんだよ。といった長閑な光景が目に浮かんでくる。

 1537の短歌と1538の旋頭歌の組み合わせとなっている。  


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