ふ  じ

フ ジ   藤 布治 敷治



藤波の 花は盛りに なりにけり 奈良の都を 思ほすや君
                    3ー330 大伴四綱


マメ科 フジ属

 フジにはフジ(別名ノダフジ)とヤマフジがある。
 ノダフジは山野に自生し、本州・四国・九州と広く分布する。花穂が20〜90cmと長く、時には1mを超えるものもあり、庭などには棚作りとして植えられている。他の木などに巻きつく蔓は右巻きといわれる。

 ヤマフジは中部以西の本州・四国・九州の山地に分布するやや暖地性の木。花穂は10〜20cmとノダフジに比し短い。蔓は左巻き。

 花の色は淡い紫色。紫は「冠位十二階」では最高位の色であるところから好まれたのか、万葉集には藤の花を詠んだものが26首ある。
 歌にある藤波は、花穂が風に吹かれて波のように揺れるさまを言うが、藤原氏の系統を表す意味もある。

 330の歌意は、藤の花は今が盛りと咲いています。奈良の都を恋しく思われますか君は、というもの。
 君は大伴旅人。神亀6年(729)大宰府の旅人の邸宅で開かれた宴で、3月に従五位上の昇叙を受けて戻った小野老が
 あをによし 奈良の都は 咲く花の 薫うがごとく 今盛りなり
と、栄えている都の様子を報告したのを受けて詠ったもの。

 小野老の歌の咲く花も、大伴四綱の藤波も、藤原4兄弟を指しているのではないか、と想像した。
 この年2月、長屋王の変があって長屋王が自殺。藤原氏にとっては怖れるものはなし、我が世の春を謳歌していたのではないだろうか。

 
その他の藤の歌

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