あへたちばな

ダイダイ   阿倍橘 



我妹子に 逢はず久しも うましもの 阿倍橘の 苔生すまでに
                 巻11-2750 作者未詳


ミカン科  ミカン属

 万葉の時代、橘は現在のタチバナも含めて、柑橘類を総称してそう呼ばれていたようです。では、この阿倍橘は今のどのミカンに該当するのでしょうか。

 キーワードは、久しも、うましもの、阿倍橘、苔生すまでだと思いますが、これまでダイダイ、タチバナ、ユズ、クネンボなどいろいろ挙げられていますが、決定打はありません。

 上のキーワードの久し、苔生すが、長い年月を表しているとみて、これはダイダイではないかと勝手に思っています。

 ダイダイの果実は、秋青い実をつけ、冬にかけて黄色に変わっていきますが、冬を過ぎても木から落ちず、そのまま2〜3年は枝についています。代々続くからというのが名前の由来だそうです。

 なお、阿倍橘の阿倍は地名とする説もあります。奈良県桜井市阿倍文珠院。静岡県安倍川。集中阿倍橘を詠った歌はこの1首しかないので判断は難しいですね。

 歌意は、いとしいあの娘に逢わなくなって久しいなあ。阿倍橘に苔が生えるまでも。

 
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