多摩川



多摩川に さらす手作り さらさらに なにそこの児の ここだかなしき
                        14−3373 東歌  奥秩父山系の笠取山に水源を発する多摩川は、東京都の西部を流れ、やがて東京都と神奈川県の県境となって東京湾に注いでいる。その長さ123kmの大河である。

 万葉の時代から多摩川沿いの各地では木綿の布が多く作られていた。日本で最初に木綿の布を朝廷に献上したのがここで作られたものだという。以来、当時の税である調としての布が多く作られた。今の調布、布田、田園調布などの地名にその名残を留めている。調布は納める布の集積場であったらしい。

 布を白くするために多摩川の清流に晒すのは若い娘の仕事だったようだ。

 歌意は、多摩川に晒す布のように、さらにさらに、どうしてこの子がこんなにもいとしいのだろうか。

 さらにさらには、多摩川の清流に布を晒すのと、娘の可愛さを強調する語を重ねている。布を作るときの一般的な作業歌のようにも思えるが、一層協調しているところは、特定の恋人を思っての歌と思われるのだが。

 歌碑は、狛江市の多摩川岸に近い住宅街の一角にある。



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