元興寺



  白珠は 人に知らえず 知らずともよし 知らずとも 我し知れらば   知らずともよし
              巻6−1018 元興寺の僧

 歌意は、白珠の真価は人は知らない。知らなくても良い。人は知らなくても私さえ価値を知っていたら、人は知らなくても良い。

 歌の左注によると、元興寺の僧で、修行を積んで多くを智ったものがいたが、そのことはあまり人には知られていず、人々から侮られていたという。そのことを嘆いて詠ったのがこの歌。このようなことで嘆くとは、まだ修行が十分でなかったということか。

 元興寺の前身は、蘇我馬子が飛鳥の地に建立した日本で最初の寺飛鳥寺。法興寺、大法興寺、元興寺とも号していたが、平城京遷都に伴い、左京の地に遷され元興寺と改称された。寺域は今の奈良町界隈を含めた広大なものであったが、今は僧房の一つ極楽坊だけが残っている。南都七大寺の一つで、古都奈良の文化財として他の寺院とともに世界遺産に登録されている。

 もとの元興寺は移建の際建物の一部を残し、本元興寺と言っていたが、今は中金堂のあったところを本堂とし、丈六の飛鳥大仏を本尊とする安居院となっている。

所在地  奈良市中院町11
アクセス 近鉄奈良駅から徒歩15分。バス福智院前から徒歩5分。

境内にある杉本健吉書による歌碑。





ホーム トップ