里山歩き


涼を求めて御岳渓谷沿いの道を歩く


2009.7.12歩く

コ ー ス  徒歩2時間5分
JR青梅線軍畑駅(10分)渓谷入口(15分)ままごと屋(3分)寒山寺(30分)玉堂美術館(40分)御岳美術館(3分)せせらぎの里美術館(25分)JR青梅線川井駅

蒸し暑い1日、涼を求めて渓谷沿いの道を歩いた。遊歩道は良く整備されており、軍畑・沢井・御岳の駅からも近いので、誰でも気軽に歩ける。ほとんど木陰を行くのと、渓谷を吹く風が涼しく快適なコース。さらに秋には紅葉がすばらしいと思われる。

    

軍畑駅
 青梅線軍畑駅へは中央線立川駅から50分。休日には新宿駅からホリデー快速が運転されるが、軍畑には停車せず、青梅駅で乗り換える。

 駅を出て正面の坂を下っていくと国道411号、青梅街道に出る。ここを右へ、多摩川に架かる軍畑大橋を渡らず、橋の手前左岸を上流に向かって進む。

 多摩川は、奥秩父の笠取山山頂近くに最初の一滴を落とし、全長138kmを流れて東京湾に注いでいる。御岳渓谷はその上流部にある。ゆったりとした流れ。岩をかむ急流。その流れの変化と両岸の木々の新緑、中でも秋の紅葉は眼を奪うものがあり、多くの行楽客に親しまれている。


御岳渓谷遊歩道入口
 駅から800m。10分あまりで渓谷沿いの道に下りる階段道があるのでここを下る。

 渓谷沿いの道は良く整備されていて歩き良いのと、木陰を行く道は川面を渡る風を受けて爽やかで気持ちが良い。

 川中では子供たちが裸になって水遊びを楽しんでいる。  

 鮎つりであろうか、転々と釣師たちが糸を垂れている。
澤乃井園
 歩き出して30分程で右手に澤乃井園がある。地酒澤乃井で知られる小澤酒造の庭園。小澤酒造は元禄15年(1702年)創業で、300年続く造り酒屋。庭園では季節の花に囲まれ、渓流を見下ろしながら軽食もできお酒の売店コーナーもある。ここでは1日4回の酒蔵見学も実施している。
 併設のままごと屋では、豆腐・湯葉料理を中心とした会席料理が味わえる。
 園内にある北原白秋の歌碑には、大正12年3月に当地を訪れ詠んだ歌が刻まれている。  「西多摩の山の酒屋の鉾杉は三もと五もと青き鉾杉」

寒山寺
 澤乃井園から楓橋で多摩川を渡った対岸に小さな堂宇が建っている。明治18年に、書家の田口米舫が中国遊学の折訪れた寒山寺で、同寺の祖信師から日本での寒山寺建立を願って木造釈迦仏一体を託されという。帰国した米舫氏はこの地に堂宇を建立することに決め、地主の小澤酒造の当主太平翁の協力を得て昭和5年に一宇を建て、釈迦仏を安置した。
 多摩の清流を眼下に望み、鬱蒼とした木立の中に佇む姿は小さいながらも風格がある。  

 堂内格天井の見事な絵は、当時の一級の画家たちの揮毫によるもの。
 また、隣の鐘楼の天井にも同じような絵があり、こちらは川合玉堂門下の画家24氏が揮毫したもの。

 ここから3分ほど下流に、櫛かんざし美術館があり、江戸から昭和にかけての櫛、かんざしを中心に日本の伝統工芸品が4000点ほど集められ、常時約400点が展示されている。

 御岳渓谷は両岸が広くなってゆったりとした流のところ、岩盤が流に迫って急流となっているところと様々な流れを見せている。この流を利用して、ここはカヌーのメッカとなっている。
 上流に小河内ダムがあり、水の流れが一定に保たれているのが好都合なのかもしれない。
 ここは流の静かなところ。初心者のレッスンだろうか。

こちらは両岸の岩が迫り出して急流となっている。ベテランの訓練だろうか。櫂を巧みに操って回転を繰り返していた。  
お山の杉の子記念碑
 さらに上流に進むと右手に歌詞と楽譜を刻んだ記念碑がある。小さい頃良く歌った懐かしい歌だ。この曲は終戦近くの昭和19年に作曲されたものだが、作曲者の佐々木すぐるは戦時中ここに疎開していて、ここで作られたこともあって、平成9年に生誕100年を機に有志によってこの地に記念碑が建てられた。
 この歌の歌詞は戦時中のものだけあって、「兵隊さんを運ぶ船」とか「今に立派な兵隊さんに」などの言葉がでてくる。このため戦後はレコードも発禁となり歌われなくなったが、後に歌詞の方は改作されて復活した。

いもうとや
 お山の杉の子記念碑を過ぎるとやがて行く手に御岳小橋が見えてくる。これを渡り右へ少しで、ままごと屋の姉妹店いもうとやがある。ここでも湯葉や豆腐料理を出している。
 瀟洒な建物で渓谷を眺めながらゆっくりと食事ができる。

 いもうとやの先(隣)が玉堂美術館。  

玉堂美術館
 日本画壇の巨匠川合玉堂は明治6年に愛知県葉栗郡に生まれ、14歳の時に京都に出て望月玉泉の門下となり、さらに23歳の時上京して橋本雅邦に師事する。その後岡倉天心、橋本雅邦、横山大観らの創立した日本美術院に当初より参加、明治40年には文展の審査員、大正4年42歳のときに東京美術学校日本画家の教授となりなど、日本画壇の中心となって活躍する。
 昭和19年に疎開で御岳に移り住み、終戦後も自然を愛してこの地に定住、昭和32年84歳で没した。  

 美術館は地元有志や全国の玉堂ファンらの寄付により没後4年の昭和36年に開館した。
 館内には15歳頃の写生から84歳の絶筆までの作品が展示されていて、年7回季節に応じた展示替えが行われる。
 秋には正面の銀杏の木が見事に黄色く色付き一幅の絵のようになる。
 休館日は月曜日(月曜が休日のときは翌日)と年末年始。入館料は一般500円。

 玉堂美術館を出たら元の御岳小橋を渡り返し、御岳橋の下をさらに上流に進む。遊歩道では道脇や民家の庭に植えられた季節の花が終始歩行者の目を楽しませてくれる。

 対岸に奥多摩フィッシングセンターが見えてくると間もなく駐車場に出る。右手の建物がたましん御岳美術館。

たましん御岳美術館
 1993年たましん歴史・美術館の分館として開館。  主な展示作品としては、荻原碌山・高村光太郎・中原悌二郎・ロダン・マイヨールなどの彫刻作品、浅井忠・岸田劉生・藤島武二・鳥海青児・梅原龍三郎・中川一政などの油絵等明治・大正・昭和の作品を展示している。
 休館日は月曜日(月曜が休日のときは翌日)と年末年始。年1〜2回の展示替えの日。入館料一般500円。

 この辺りの渓流の風景も見事で、画架を立てる人が多い。

   この先すぐのところにせせらぎの里美術館がある。

せせらぎの里美術館
 築150年の奥多摩民家を解体し、その部材で建てたというこの美術館は、民家風の建物で、落ち着いた周囲の景観に溶け込んでいる。
 ここでは多摩地方ゆかりの作家の作品展を年4〜5回行っている。
 休館日は月曜日(月曜が休日のときは翌日)と年末年始。入館料は一般300円。

 せせらぎの美術館を出てすぐに国道411号線(青梅街道)に出る。ここから川井駅まではひたすら車道を歩くことになる。歩道はあるものの狭いので車には十分注意したい。
 ここは川井駅と御嶽駅の中間くらい。場合によっては途中多摩川の対岸に移って御岳まで戻るのも良い。

 20分ほど歩き民家が見えてくると川井駅は近い。左に交番を見てほどなく大丹波川に架かる橋につく。橋の手前を右へ。青梅線の高架を潜るとすぐ右上が川井駅だ。

川井駅
 この駅も駅員無配置駅。立川までは1時間ほど。  


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